令和2年6月13日(土)雨の土曜日


今日は、雨降りです。全く外には出られません。
土曜日の園は、いつもと雰囲気が違います。人数が違うので当たり前ですが、それだけではないような気がします。
いつもと違う異年令で過ごす時間が長いことを本日お見えになっている園児さんたちはどのように思っておられるのでしょう。
さて、私事で恐縮ですが、図書館でタイトルに惹かれ、手に取ってみた本を只今斜め読みしています。かなり分厚い本です。少し紹介させてください。
「『子ども白書2019』特集にあたって 子どものrightを世界に呼びかける 森本扶 子ども白書編集委員長 子どもを権利の主体にするとは」から一部抜粋
「 ~略~ 振り返ってみると、子どもの権利論は、戦争で多くの子どもが無惨にも殺傷された反省から、おとなが子どもに最善のものや環境を与える義務があることが明確にされたことが出発点でした。権利条約は、そこから一歩進めて、従来の親子の関係や学校などさまざまな保護や管理の権威はともすれば子どもの成長を阻害することがあるとの認識をベースに構想されました。つまり、権利条約は、おとなが良かれと考える「子どもの最善」だけでは不十分であることを示しました。また、子どもを集団でとらえるのではなく、ひとりひとり固有の生存と発達を大切にしなければならないことを想起しました。それゆえにおとなは子どもが発するさまざまな信号を感じ取り、子どもと真剣にかかわり続けねばならないことを強調しました。こうしたことがright(正しいみちすじ)にならなければいけないと世界に呼びかけたのです。子どもを権利の主体としてその地位を社会的に保障しようというのはそういうことです。 ~略~ 」
さらに、あとの論稿で堀尾輝久氏(東京大学名誉教授)が
「子どもとおとなが相互に『応答する関係』を前提とすることが子どもの権利思想の肝であり、『関係性」の上に立つ権利思想こそ新たな人権思想を発展させると希望を込めて述べられています。』
と、この事にも大変共感いたします。
本園では、園内研修の時間だけでなく事あるごとに「子どもの主体性」「応答」についてのそれぞれの思いや考え、実践を交流しております。わたくしは、乳幼児の皆さんが一日の多くの時間を過ごす園だからこそ、保育者はこれらのことをしっかり自分の中に落とし込んでおいてほしいと思っています。
私が四半世紀以上の永きにわたって道しるべとしております河合隼雄さんの教えを紹介させてください。
河合隼雄氏『子どもの宇宙』(岩波新書)の「はじめに」より引用。
「この宇宙のなかに子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりひとりの子どものなかに宇宙があることを、誰もが知っているだろうか。それは無限の広がりと深さをもって存在している。大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされて、ついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちのなかにある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善意」という名のもとになされるので、余計にたまらない感じを与える。
私はふと、大人になるということは、子どもたちのもつこのような素晴らしい宇宙の存在を、少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。それでは、あまりにもつまらないのではなかろうか。」
わたくしは、子どもの声に耳を傾けない大人にはなりたくはなかったから、わたくしは、「意見表明権」を大事にしました。その権利を行使できる雰囲気を私自身がもつこと、クラスが、学校がもつことを大事にしてきたつもりです。いま、さらに小さき子どもたちと日々向き合わせていただくなかで、保育者と共に子どもたちの声に真摯に耳を傾けることができる大人でありたいと強く思っています。
長くなりました。誠にありがとうございました。合掌。